トップ注目研究次世代型「脳関門創薬」拠点形成:ヒト血液脳関門物流システム解明に基づく脳関門突破型抗体・核酸医薬の開発
カテゴリー 医学、薬学、基礎、臨床、創薬
代表研究者 立川 正憲
関連する研究者   小迫 英尊   小暮 健太朗   石田 竜弘   山本 圭   田良島 典子   鬼塚 正義
福田 達也
  中島 公平   藤原 敏孝
研究概要

 日本は超高齢化社会を迎え、30年後には国民の2人に1人が、中枢疾患を患う時代に突入する。

 中枢薬の開発において、血液脳関門(Blood-Brain Barrier, BBB)突破戦略の構築は最重要課題であるが、現状では開発候補薬物のうち、低分子の98%・高分子のほぼ100%は、脳へ移行しなかったと報告されている。特に近年著しい研究の進展を見せている、脳内分子標的化抗体や核酸を、中枢薬として開発する場合、難攻不落のヒト脳関門突破機構の解明とそれに基づく薬物送達技術の開発が不可欠である。

 そこで本研究クラスターでは、若手研究者を集結させ、次世代型「脳関門創薬」拠点を徳島大学に確立し、脳関門物流システムの作動原理を、ヒトに特化して分子レベルで解明するとともに、その知見に基づく脳関門突破型抗体・核酸医薬の開発を最終目標とする。

 具体的には、
 1)ヒト全ゲノムタンパク質定量パネルを用いた高精度質量分析による、正常(若年期・老齢期)及び中枢病態におけるヒト脳関門のプロテオタイピング
 2)抗体・核酸医薬スクリーニングのための、ヒトin vivoを反映した正常/病態時の三次元血液脳関門モデル確立
 3)ヒト脳関門突破型抗体の配列と製造方法の確立、及び
 4)ヒト脳関門突破型核酸医薬製剤の組成と製造方法の確立を目指す。

 本研究開発を通して、Barrier Logistics, Barrier Mimetics, Barrier Materialsの各学術分野を構築し、次世代型ヒト脳関門創薬の新学術領域を樹立することで、停滞する中枢創薬の突破口を拓く。

 

▼研究クラスターNo.1903001
https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/988.html

研究者の役割分担 A.「脳関門創薬」基幹技術開発チーム
 〇立川正憲(脳関門科学・薬動力学)<研究統括・クラスター長>:
  ヒト脳関門輸送機構の全容解明と分子病態、脳関門物流モデルに基づく抗体/核酸の探索と分子設計、ヒト病態における脳関門再構築モデルの構築と速度論に基づく輸送評価
 〇田良島典子(核酸化学):脳関門透過型核酸の分子設計・有機合成
 〇鬼塚正義(抗体生産工学):脳関門透過型抗体の探索・合成技術開発
 〇中島公平(脳腫瘍医学):脳手術検体・脳腫瘍ゼノグラフトモデル構築、脳血管単離法の確立、ヒト脳腫瘍関門モデルの開発
 〇藤原敏孝(脳神経外科学):脳手術検体からの脳血管単離法の確立、ヒト脳腫瘍関門モデルの開発
B. ヒト脳関門オミクス開発チーム
 〇小迫英尊(生化学/プロテオミクス):ヒト脳関門輸送体タンパク質の網羅的同定手法の確立、修飾タンパク質の網羅的同定に基づくヒト脳関門の分子病態の解明
 〇山本圭(質量分析/メタボロミクス):脳関門透過型分子の質量分析系確立、脂質の網羅的解析に基づくヒト脳関門細胞膜輸送の分子的解明
C. 物性解析・製剤化チーム
 〇小暮健太朗(ナノ粒子科学):脂質膜間移行法を用いた脳関門透過型微粒子の開発
 〇石田竜弘(製剤設計学):脳関門突破型核酸・抗体の物性評価、脳腫瘍関門突破型抗体・核酸の製剤化基盤技術の開発
 〇福田達也(薬物送達学):脳関門透過型抗体・核酸・微粒子の物性評価
研究期間 2019年4月1日〜2022年5月31日
産業界へのメッセージ 本クラスター研究では、ヒト脳関門輸送体のプロテオミクス解析に基づく脳への新たな薬物送達経路の開拓と、三次元脳関門モデルを基盤とした中枢薬の脳移行性評価・予測法の構築を柱として、積極的に産学連携を図ります。

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