トップ注目研究炭酸アパタイト多孔体をスキャフォールドとした骨再生医療の開発 -異所性骨再生を目指して-
カテゴリー 医学、基礎、臨床、歯学
代表研究者 宮本 洋二
関連する研究者   工藤 景子   福田 直志
眞野 隆充
大江 剛
  栗尾 奈愛   工藤 隆治   橋本 一郎
鎌田久美子:徳島大学医歯薬学研究部口腔外科学分野・大学院生・口腔外科学
秋田和也:徳島大学医歯薬学研究部口腔外科学分野・大学院生・生体材料
石川邦夫:九州大学大学院歯学研究院 生体材料学分野・教授・生体材料
研究概要

 骨補填材として広く使用されているハイドロキシアパタイトは体内で吸収されず、異物として残遺し、時に感染源となる問題があった。申請者らは九州大学と共同で生体骨の主成分である炭酸アパタイトの人工合成に成功した。炭酸アパタイトは優れた骨伝導能と生体内で破骨細胞による吸収と骨添加を受け、骨と置換する優れた性質を有する。当科が中心となり多施設臨床治験を終了し、2018年2月より株式会社ジーシーからサイトランスグラニュール®として発売された。なお、この功績により、宮本らは本年3月に内閣府の第1回日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞を受賞している。

 しかし、市販されている炭酸アパタイトは緻密顆粒である。緻密顆粒は操作性に劣るため、柔軟なスポンジ状化による操作性の向上も必要であった。また、より速い骨の再生、骨結合のためには、骨形成を促進する多孔化が必須であった。

 申請者らは、2017年度選定クラスターにおいて、炭酸アパタイト多孔体の作製に成功した。さらに、2018年度選定クラスターでは、安全性が高い魚うろこコラーゲンに着目し、新規骨補填材としてスポンジ状の操作性に優れた炭酸アパタイト・魚うろこコラーゲン複合体の作製に成功した。生体親和性は良好であり、骨形成も確認することができた。

 2019年度は、過去2年間に開発した炭酸アパタイト多孔体および炭酸アパタイト・魚うろこコラーゲン複合体を組み合わせ、骨再生医療のスキャフォールドとして応用することによって、異所性の骨再生技術の開発を目指す。すなわち、近交系ラットを用いて、骨髄幹細胞を分離し、これを多孔体内で培養後、皮下などでの骨の再生実験を予定している。

 

▼研究クラスターNo.1903002
https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/996.html

研究者の役割分担 宮本洋二:研究計画の立案、総括
工藤景子、鎌田久美子、福田直志、秋田和也:炭酸アパタイト多孔体試料作製、動物実験
真野隆充、大江 剛、栗尾奈愛:培養実験、動物実験
工藤隆治:マイクロCTによる解析
橋本一郎:医科領域への応用に関する助言、動物実験
石川邦夫:理工学的研究に関する助言
研究期間 2019年4月1日〜2022年3月31日
産業界へのメッセージ われわれは、生体骨の主成分である炭酸アパタイトの人工合成に世界で初めて成功しました。同材料は、歯科用インプラント埋入のための骨造成術に本邦で唯一承認された骨補填材ですが、さらに改良を加え、自家骨移植なしに、がんや外傷による大きな骨欠損の骨再建への応用を目指しています。

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