〔設置目的〕
愛媛大学はアジアでトップクラスの疫学研究の教育研究拠点を目指す。
A)研究の特徴は以下の3点である。
- 一次予防(疾病発症予防)に資する「愛大コーホート研究」、「出生前コーホート研究」、「難病の症例対照研究」等や臨床での疫学研究のデータを用いて、数多くのエビデンスを創出する。
- 医療機関から電子カルテ情報を抽出するシステムを開発し、疫学データと電子カルテ由来の医療情報とを突合して、相補的に患者に関する情報の粒度を高めさせることにより、「愛大コーホート研究」を革新的に進化させる。対象者数、情報量とも本邦最大規模のコーホート研究を目指す。
- 従来の疫学研究の枠組みに加えて、複雑系のモデルを取り入れた疫学データの解析を実施し、新たな視点でのエビデンス導出を試みる。
B)本リサーチユニットの愛媛大学への波及効果は以下の4点である。
- 「愛大コーホート研究」のビッグデータで市販後薬効等解析により、民間からの外部資金獲得を目指す。
- 臨床での観察的疫学研究や介入研究(医師主導治験)への応用展開を加速する。国際的治験等受託研究の獲得を増加させ、愛媛大学病院は臨床研究中核病院を目指す。
- 全学的に、統計、疫学、複雑系学問の専門家を養成し、医学、医療の面だけでなく、その他学術分野、ビジネス、経営、行政面でevidence-based decision making(根拠に基づいた意思決定)を推進できる人材を育成する。
- 医農連携によりエビデンスに基づいた機能性食品等を開発することで、新産業創出に貢献する。
〔活動計画概要〕
【愛大コーホート研究】
- 40~74歳男女を対象とする。ベースライン調査では、質問調査票への回答、各種健診受診、遺伝子等検体保存を行う。平成27~28年度、八幡浜市、内子町の約1,200名が参加した。
- 今後、全県的なコーホート研究に発展させる。本研究期間中に愛南町、西条市、宇和島市等連携協定市町にてリクルートを拡大する。さらに、とうおん健康医療創生事業と連携したリクルートも行い、東温市のデータも統合する。企業でのリクルートも検討する。
- 毎年、追跡調査を行い、認知機能検査、疾患発症や再発、通院、治療状況等に関する情報を得る。
- 電子カルテ情報抽出システムを開発し、医療機関から研究対象者に関する電子カルテ情報を収集し、上記疫学データと突合して網羅的データベースを構築する。
- 情報システムを活用し、医療機関において入院・通院患者をリクルートする方法を確立する。
【その他の疫学研究】
- 出生前コーホート研究の九州・沖縄母子保健研究では、母子の健康問題のリスク要因を調べる。
- 道後スタディは糖尿病患者が対象である。様々な予後と関連する因子を調べる。
- 厚生労働科学研究費補助金で潰瘍性大腸炎の症例対照研究を実施している。
- 農学研究科と連携して、機能性食品の介入研究を実施する。
【コンサルト、学内での疫学の涵養】
- 疫学研究、臨床研究に関する研究プロトコルの設計、統計処理に関するコンサルトを行う。また、論文投稿において、論文の共著者として統計解析及び文章表現の妥当性を検証する役割分担を担い、論文の採択件数を自他ともに向上させることを狙う。
- 医学科では従来の疫学・医学統計学に加えて、情報倫理、ベイズ・複雑系等の発展的な解析方法論を展開する。また、医学部以外の学部との互換単位対象として提供する。農学部、社会共創学部、教育学部等、さらには松山大学薬学部にも開放し、アジアのトップクラスの研究拠点を構成する人材を輩出するための教育カリキュラムとして編成する。