トップ注目研究光殺菌による食品を介した薬剤耐性菌の拡散防止システムの開発
カテゴリー バイオ、食品、バイオ
代表研究者
下畑 隆明
関連する研究者   村上 圭史   東 桃代
首藤 恵泉
  宮脇 克行   芥川 正武   鈴木 浩司
清水正明:徳島県農林水産総合技術センター 専門研究員
丸谷永一:徳島県農林水産総合技術センター 主任
和田敬宏:日本フネン株式会社
研究概要

基質特異性拡張型βラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)は、ペニシリンなどのβラクタム環を持つ抗生物質を分解する酵素であり、ESBL産生菌は、世界的な薬剤耐性菌問題となっている。ESBL産生遺伝子は大腸菌などのRプラスミドに保存されているため、腸内細菌科の異なる菌種間に伝達され、病原性細菌の治療を難しくしている。

ESBL産生菌を中心とした薬剤耐性菌の問題はヒトのみに留まらず、抗菌薬を多く消費する家畜・畜産関連においても重要課題となっている。農場で生まれた薬剤耐性菌の拡大は、農場で生産された食品を介してヒトに拡散する恐れがあり、将来的にこれらの薬剤耐性菌の拡散が臨床的に使用できる抗菌薬を制限させ、感染症の拡大につながることが懸念されている。

これまでの研究から、市販鶏肉からはESBL産生大腸菌が頻繁に検出され、薬剤耐性菌の拡大への関与が示唆された。昨年までの検討では食品全般をターゲット、UV-LEDの有用性を模索していたが、本研究では鶏肉の生産・加工に焦点を絞り、ESBL産生大腸菌の拡散防止措置として、UV-LEDの有用性について検討を行う。申請研究では1鶏舎、食鳥処理場所から分離されるESBL産生大腸菌と、臨床から分離されるESBL産生大腸菌の性質を較検討し、2拡散リスクの高い遺伝子型のESBL産生大腸菌を中心に、UV-LEDの光殺菌効果を検討する、3最終的には、鶏舎、食鳥処理場にUV-LEDの光殺システムを導入し、ESBL産生大腸菌の拡散防止措置として、UV-LEDの有用性について検討を行う。

 

▼徳島大学研究クラスターNo.1903006
https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/1010.html

 

研究者の役割分担 下畑隆明:研究総括、1UV-LED殺菌実験(鶏舎を用いた評価)
村上圭史:2ESBL産生大腸菌の鶏舎・鶏肉分離株・臨床分離株遺伝学的比較検討(光感受性の比較)
東桃代:2ESBL産生大腸菌の鶏舎・鶏肉分離株・臨床分離株遺伝学的比較検討(遺伝子の比較)
首藤恵泉:1UV-LED殺菌実験(食肉を用いた評価)
宮脇克行:1UV-LED殺菌実験(UV光に対する微生物の光応答の解析:病原性・増殖能)
芥川正武: 3殺菌装置の開発(光殺菌デバイスの最適化:光波長とエネルギー量)
鈴木浩司 :3殺菌装置の開発(効果的にUV-LEDを照射するためのロボット技術開発)
清水正明:1UV-LED殺菌実験(UV-LED導入による鶏の増体変動と、生存率の変化を調査)
丸谷永一 : 1UV-LED殺菌実験(UV-LED導入による鶏の行動変化の解析)
和田敬宏:3殺菌装置の開発(光殺菌デバイスの最適化:工業デザイン)
研究期間 2019年4月1日〜2022年3月31日
産業界へのメッセージ UV-LED殺菌装置は小型で耐久性も強いため、様々な分野への応用が期待されている殺菌装置です。我々は食品表面に付着した薬剤耐性菌を、UV-LEDで効率的に殺菌することで、食品を介した耐性菌の拡散を防止したいと考えています。

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