トップ注目研究要介護リスクを高める骨粗鬆症・関節リウマチにおける骨代謝制御機構とその破綻のエピゲノム解析
カテゴリー 医学、薬学、工学、バイオ、基礎、歯学、創薬、機械、生物、ゲノム、バイオ
代表研究者
井澤 俊
関連する研究者   常松 貴明   松本 健志   日浅 雅博
岩浅 亮彦
森 浩喜
石澤 有紀
竹下 淳:国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部・室長・分子細胞生物学
研究概要

骨粗鬆症検体を用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)やクラスター解析を用いて造血幹細胞と相関があると見出されてきた核に存在するタンパクASXL1(Additional sex comb like 1)は、最近になってマクロファージをはじめとする一部の免疫細胞にも高発現していることが明らかになってきた。

本研究では破骨細胞活性化因子として知られているRANKL (Receptor Activator ofNF-κLigand)シグナルと代謝エピジェネティック制御遺伝子ASXL1のシグナルクロストークによる破骨細胞分化や活性化・維持機構を明らかにする(図1)。

さらに平成29年度のクラスターテーマから発展させASXL1遺伝子を原因遺伝子とする頭蓋顎顔面領域に重篤な症状を示すBOP (Bohring-Opitz)症候群、骨粗鬆症や顎関節リウマチなどの病的状況下での骨リモデリング機構の解明を行う(図2)。

また、近年同定されたヘルパーT細胞中のTh17細胞サブセット、M1/M2マクロファージ、骨細胞とのカップリング因子にも焦点をあて、核内ASXL-BAP1(BRCA1-associated protein 1)ポリコーム群複合体による影響解明、多臓器連関および新たな頭蓋顎顔面領域における骨代謝疾患の診断や治療法の開発を目的とする(図3)。

骨粗鬆症により骨折し、寝たきりになることでさらに骨量が減少し、骨折治癒までもが遅延してしまう負のスパイラルに陥ってしまうことが問題となっている。カップリング機能の促進はその負のスパイラルを断ち切ることで骨折のリスクを減らし、骨量を回復し骨質を改善することで患者のQOLを回復することが期待される。そこで今年度より理工学研究部松本、高輝度光科学研究センターの星野主幹研究員が放射光X線を利用した骨質評価を分担し医工連携の発展を目指す。近年の癌治療薬の開発研究において、エピジェネティック制 御を創薬標的として利用する試みが注目されている。これらのことが明らかになれば、臨床へのアウトカムとして破骨細胞を標的とした骨吸収抑制剤の開発において、ASXL-BAP1 axisを中心としたエピジェネティック創薬は有効なアプローチのひとつになることが考えられ、新たな分子標的治療の創出につながることが予想される

 

▼徳島大学研究クラスターNo.1803001
https://cluster.tokushima-u.ac.jp/new-cluster-list/705.html

 

研究者の役割分担 研究クラスター長は図に示すような研究クラスターを構築する予定である(図4)。すでに、研究クラスター長は徳島大学にて研究グループを率いている。細胞周期チーム(C-team)に医学部教員常松貴明助教(分担者)、骨免疫チーム(O-team)に井澤俊(クラスター長)、岩浅亮彦助教(分担者)、骨の微細構造バイオイメージングチーム(B-team)に日浅雅博助教(分担者)が参画することで若手研究者による異分野融合を目指す。さらに今年度より大学院理工学研究部松本健志教授が加入し骨微細構造解析・フーリエ変換型赤外/ラマン顕微分光法による骨質評価を分担いただくことで医工連携の発展を目指す。外部機関のクラスターメンバーとして大型放射光施設Spring-8を有する高輝度光科学研究センターの星野真人 主幹研究員が新規参画し放射光計測を担当頂きX線イメージングにより骨の数理モデルを構築する。疾患動物の維持・管理および臨床サンプルの収集に関しては研究協力者の森浩喜医員が分担する。さらに、基礎的実験に関しては在籍している大学院生 イスラミ フタミ(インドネシア ガジャマダ大学歯学部出身)、ツェンドスレン(モンゴル)が研究協力者として研究に参加する予定である。骨の形態計測は研究代表者の留学先である米国ワシントン大学Steven L. Teitelbaum 教授が主宰する骨代謝学部門への若手教員、大学院生の短期留学により実施する。本クラスターより得られた化合物の臨床薬理作用の検討は新規クラスターメンバー徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医学域 薬理学分野 石澤有紀 講師が担当する。また、外部機関との連携として国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部竹下淳室長は都市部の患者検体の収集と次世代シーケンサーを利用した遺伝子変異スクリーニング・エクソーム解析の実施、患者の会での講演を担当する。
研究期間 2018年7月1日〜2021年3月31日
産業界へのメッセージ 骨粗鬆症により骨折し寝たきりになることでさらに骨量が減少し、骨折治癒までもが遅延する。光応用による骨イメージングを駆使した本クラスターは骨質の改善、患者のQOL回復が期待できる。

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