はじめに
高知県では少子化の影響による学校の小規模化が顕著であり、今後10年間で県立高等学校36校のうち3分の1にあたる13校が、実質的に「1学年1学級20名以上」として、特例により維持される小規模校となることが予想されている。この対策として高知県教育委員会では、有識者による検討会議を発足し、平成27年度よりTV会議システム導入による中山間地域の小規模校間の遠隔合同授業の調査研究に取り組んでおり、従来の対面授業に近い教育の可能性が確認されている。一方、これに伴う新しい授業方法や学習評価方法の検討などを通じて、小規模校であることに起因する教師教育のあり方などが今後の課題とされており、特に授業研究に係る教員を支援するための新しい計算機援用による支援システムの開発が望まれている。
本プロジェクトの概要
プロジェクトでは、すでに指定実験校に導入・検討されている遠隔授業システムを有効活用することを目指した、より高度な支援機能の開発、さらに収録した授業動画の利用による遠隔非同期による研究授業のピアレビューの実現とレビュー結果の活用を目的とした遠隔合同授業を支援するための統合的な授業研究環境の理論構築、および開発と実践を目指す。
本プロジェクトでは、理学部門の情報科学コース教員(塩田、森、高田、三好、鈴木、岡本(プロジェクトリーダー))と総合情報センター教員(石黒)との連携により、合同遠隔授業を支援する高度情報技術の開発を目指して、平成28年度から研究に取り組んでいる。
統合的遠隔合同支援環境の構築
本プロジェクトが目指す支援環境は下図に示すような、(1)視覚センサーを用いた収録カメラの自動制御、(2)プレゼンテーション・ピアレビュー支援研究の応用による研究授業レビュー支援システム、(3)授業改善やe-Learning、教員間の情報共有に対応するLMS、(4)教育ネットの安全性を保持した情報技術活用型教育の提供、(5)グラフ理論の応用による、生徒の進路希望に応じた遠隔授業科目マッチング問題の解決方法、などの技術を統合化した支援環境である。
各構成要素はインターネットを介して相互に連携して機能し、各々が新規性の高い手法を独自に開発・採用することで、従来の支援システムでは実現できなかった遠隔授業の諸課題にアプローチすることを主眼としている。
おわりに
本プロジェクトでは、これまで高知県教育委員会、高知県教育センターと検討会や研究ミーティング、さらに追手前高校や窪川高校などの研究指定校における授業参観や担当教員へのヒヤリングなどを通じて、教育現場における具体的な課題の検討やニーズの分析などを行ってきている。
平成29年度は、これらを踏まえ、支援環境のフレームワークの検討と提案、さらにシステム開発の核となる要素技術の開発に取り組む予定である。